サンデーサイレンス 1995−2002リーディングサイアー。2002年に死亡したため3世代を残すのみだが、それでもPOGで上位に食い込もうと思うと無視できない種牡馬に変わりはない。


2002.3.09現在の重賞勝ち馬一覧を参考にしながら母の血統構成による傾向や選択基準を考える。

Northern Dancer系
母の父がNorthern Dancer系だけで39頭(53%)もいるが、Northern Dancerを含む母とすると51頭(69%)にも及び相性の良さを伺わせる。
もちろんSSと配合されるのはNorthern Dancer系を含む母が多いので、大まかな系統別に分けて傾向を見てみる。
ノーザンテースト
 活躍馬のほとんどが母か祖母または叔父や叔母などの近親が活躍馬。距離別で見ると1200mと1800m、グレード別ではG3勝ち止まり多いことから軽いスピードに優れている反面、底力に欠けると言える。また3歳前半でピークを迎える早熟タイプが多く、春のトライアル以降は悲しい思いをするのも特徴だろう。ただし母自身にMahmoudのクロスがありBlenhiem系やGainsbrough系のスタミナが多い血統の場合は、ローゼンカバリーや(母の父ではないが)ステイゴールドのように長く中長距離路線で活躍できるようだ。(G1を勝てないことには変わりないが。)
Nijinsky系(Nijinsky,Caerleon,マルゼンスキー,ヤマニンスキー,ノーアテンション)
 Bull LeaやBull Dogといったクロスからスタミナがあり中距離以上に適性があるが、スピード不足となりやすく重賞勝ち馬は母系でMenowやNasrullah、Khaledなど優れたスピードの血を補っている。逆にスピードさえあれば重賞勝ち7頭中5頭がG1馬と底力を期待できるので、一発大物狙いには最適。POG的には産駒に優れたスピードタイプが多いCaerleon、マルゼンスキーが良いだろう。
Lyphard系(Lyphard、Al Nasr)
 Lyphardがヨーロッパの血を主体とするためSSの持つアメリカ系のスタミナの影響が弱く、マイルから10Fで鋭い決め手を発揮するスピードタイプが多いのでG1を狙うなら牝馬の方が有利だろう。じっくり溜めて末を生かす脚質の馬が多いのも特徴で、これはLyphard系の激しい気性が影響を及ぼすためと思われる。配合的には母がHyperionやMahmoudのスタミナを生かしていれば、12F以上もこなせる馬が出る可能性もあるはずだが、これまでの傾向からは難しいだろう。
Danzig
 母の父の産駒の傾向と同じくスピードに優れ底力も期待できるが、脚元がちょっと弱いところも同じ。母系でBlenhiemやHyperion、Bull Leaといったスタミナを補うタイプが活躍しているようだが、それでも3歳戦の10Fが限界なのでPOGでは2歳戦、桜花賞が目標になりそうだ。早熟ではないと思うが出走回数が少ないので、体質的にも少し弱いかもしれない。
Northern Dancer系は以上の4系統だけではないが、共通して見えてくるのは
 1.Northern Dancerが4代以内にあること。
 2.「Hyperionの影響が強い(近親クロスを持つ)母」または「Tom Foolのようなアメリカ系のタフなスピードを持つ母」が多い。
これら2点ともAlmahmoudクロスの効果をより高めるために必要だと考えられ、先に挙げた4系統の活躍馬にも該当する産駒は多い。この辺りに注目していけば、かなり頭数は絞れてくるはずだ。
また、母の父がNorthern Dancer系でなくても母の4代以内にNorthern Dancerがある場合はAlmahmoudの影響が最優先になりやすいので、Northern Dancer系との配合と同じと考えた方がいいだろう。

Raise a Native系
 Mr.Prospector系やAlydarと相性がいいが、Northern Dancerのように無条件では4代以内にクロスが出来ないためか早熟な馬は少なく古馬になっても活躍しており、またグレードの比率がG1:G2:G3=3:5:1で距離もマイルと2000mに実績が高いなど、Raise a Native系は底力がなく平坦向きというイメージとはかなり異なる。
 配合的には4代以内にHail to ReasonやTurn-to、Royal Chargerのクロスを持つ馬が9頭中4頭いるのが他系統と異なる(Northern Dancer系では4/39)点で、このことは早熟性や能力の引き出し易さといった面で有利に働いたためと思われる。5代目からのクロスに着目してみるとサイレントハピネス姉妹以外は、スピード能力に寄与するPharamond(またはSickle)が母の7代以内に存在するが、この条件を満たすためには母の父の父がRaise a Nativeか母系で補うしかなく、今のところは必須条件と考えて良いだろう。条件に当てはまらないサイレントハピネスとスティンガーについては父と同じMahmoudのクロスの影響が強い配合で、マルカコマチやキングオブダイヤのように他の系統でも似たイメージの活躍馬が出ている。
 基本能力がスピードのクロスに依存するためかマイラータイプが多いが、母の母内Robertoのスタミナを生かしたブライトサンディーのような配合であれば距離の克服も可能だろう。
 あと、重賞勝ち馬が牡馬2頭に対して牝馬が6頭というのも面白い。距離適性的にも桜花賞、秋華賞辺りを狙うならこの配合という気もする。
Bold Ruler系
 5頭中4頭がG1馬でしかも全て牡馬クラシック馬なのでPOG的にはなかなか魅力的。ちなみにクラシック5勝で1番人気だったのはタキオンの皐月賞だけで、あとは2番人気か3番人気というのがBold Rulerらしいと思うのは気のせいか。距離は3歳時なら万能といえるが古馬になるとマイルから10Fが合っているようで、この辺りもBold Rulerらしいといえるだろう。
 配合面ではジェニュインとエガオヲミセテがNorthern Dancer系の配合と同じと考えられるので、アグネス兄弟とエアシャカールの2タイプの配合しかなく成功例から特徴を導き出すのには無理があるだろう。逆にPOGで人気になりデビュー当初は注目を集めるSeatlle Slew牝馬との配合が成功していないことから、Raise a Native系とは逆に4代以内にHail to Reasonなどのクロスを持たないのが良いのだろう。(一応チューニーがSeatlle Slewを母母父にもっているが、Bold Ruler系の母父ではなく、さらにNorthern Dancer系との配合と見なせるので除外している)したがって少しわかりにくいかもしれないが、MahmoudやHyperion、SolarioといったBold Ruler系の底力のなさを補う血を多く持つ牝馬とのアウトクロスの配合に注目したい。
トニービン
アドマイヤベガの成功で今後増えると思われる配合だが、実は母の父がトニービンだから成功したというより母の母の血がSSと相性がよかったための成功といえ、トニービンだけではSSのもつアメリカ系の血やMahmoudがクロスできずに底力や勝負根性に欠けることになる。重賞勝ち馬は3頭ともNorthern Dancerが母の4代内にあるので、Northern Dancer系の配合と考えれば日本適性やスピードを期待できるので今後は注目かもしれない。逆にNorthern Dancerを持たない母から活躍馬を望むのは少し難しいと考えた方が良さそうだ。

リアルシャダイ
Hail to Reasonの3x4にその他のクロスがほとんど含まれるため仕上がりやすくスタミナも期待できるはずだが、スピードが足りないのかノーザンテーストとDanzigを含む母から重賞勝ち馬が出ている状態で、トニービンと同じく事実上はNorthern Dancer系との配合と考えた方がよい。こちらもNorthern Dancerを持たない母から活躍馬が出るのは少し難しそうだ。

トウショウボーイ
Mahmoud、Hyperionの影響が強く母の父の日本向きのスピードを生かした配合だが、SS内のアメリカ系の血がクロスが出来ないのでスタミナや底力に欠ける。母系で補ってやることで克服できるはずだがいまのところ2000mぐらいが限界。ちなみに同じテスコボーイ系の母の父にサクラユタカオーがいるが、こちらはMahmoudを持たないせいでさらに早熟のスピード馬となるので敬遠したい。


以上の系統以外との配合の産駒も活躍しているが、それらも含めた配合上の特徴としては

1.Mahmoud、またはその産駒であるAlmahmoudのクロスの影響が強い産駒が多い。Almahmoudのクロスを持つ馬は51頭(69%)、Mahmoudは63頭(85%)。
2.4代内にクロスを持つ馬が56頭いる(76%)。
3.ほとんどが4代以内から始まるクロスは1つだけで、2つあるのはHail to ReasonクロスかTurn-toとAlmahmoudのクロスを持つタイプのみ。
4.Almahmoud以外で4代以内のクロスは父の直系の先祖で、Hail to Reason、Turn-to、Royal Chargerのみ。
5.父の父の影響が強い(前にあるクロスが父の父に含まれている)産駒がほとんどで例外はフジキセキ、フサイチエアデール、マジックキスの3頭のみ。(96%)
6.5代目でHyperionがクロスする馬が20頭(27%)もいる。
  なお、Pharamond=Sickleも43頭(58%)、Nearcoも35頭(47%)いるが、前者はPharamond=Sickleを持つ母の比率を考えると意味がなさそうで、後者はNorthern Dancer系が多いためといえることからあまり考慮しなくても良いだろう。

したがって以上に挙げた系統、母の父以外との配合でもこれらに着目して産駒を選ぶと良い。なお、性別に関しては牡:牝=49:25で牡馬優勢に見えるが、POG期間中の重賞に限れば31:20なので差はないと考えられるだろう。

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